「国際子ども図書館」の建物を見学してみよう。

[ チルドリン vol.09 2007年発行より ]

本を読むだけじゃもったいない!

先日、話題の国立新美術館が開館しました。
すでに遊びに行かれた方もいるでしょう。
その一方、「行きたいなぁ」と思っていても、子どもと一緒に行くことを考えると
なかなか足を運べないというママも少なくありません。
そこで今回は、美術館や図書館などの文化施設を訪れる際に「建物全体を観る」という新しい楽しみ方を紹介します。
「国際子ども図書館」で定期的に開催されている館内見学ツアーに実際に参加し、体験してみました。

今年に入ってから、新しくオープンする美術館に注目が集まっています。月末には六本木に国立新美術館が開館、3月末にはサントリー美術館のオープンが予定されていて、親子で訪れたい文化施設が次々と誕生しているようです。

さて、小さなキッズを持つママは、美術館や博物館、図書館などを訪れるとき、いつもどこにお出かけをしていますか?また、「子どもの感性を育てるために、 いっしょにいろんな文化施設に行ってみたいなぁ」と思う反面、「子どもが騒ぐから」「落ち着いて観られないから」という理由で、せっかくの機会を逃しては いないでしょうか?そこで今回、チルドリンでは“文化施設のもうひとつの訪れ方”を紹介したいと思います。

せっかくママが楽しみに見に行った展示に、子どもがまったく興味を示してくれず、すぐに飽きてしまうようなら、建物の全体を一度ぐるりと見渡してみましょ う。ちょっと視点を変えて外観や内観を注目してみるだけで、おもしろい疑問や発見がいくつも見つけられるはずですよ。「どんな素材でできているかな?」 「どうしてこんなかたちをしているのかな?」「このかっこいい椅子は、どこの国のものかな?」・・・建物の背景や歴史を知ったり、造形のおもしろさを共感 したり、有名な建築家が建てた美しい建築物のシルエットをじーっと眺めたりするだけでも、親子で十分にアートを楽しむことができます。

東京・上野にある「国立国会図書館国際子ども図書館」は、建物を楽しんでみたいビギナー親子におすすめしたい施設のひとつです。建物は昨年100周年を迎 え、その古く重厚な造りは、東京都の歴史的建造物に認定もされています。創建は明治39年。帝国図書館として建てられた建物を昭和4年に増築し、その頃の 明治期ルネサンス様式の建築物を修復・再生してつくられたのが、現在の「国際子ども図書館」です。2000年に行われた再生計画では、建築家の安藤忠雄さ んらが設計を手がけ、明治時代の建物をガラスのケースで包み込むという斬新なアイディアが当時大きな話題を集めました。改修において目指したのは、歴史あ る建物を保存すること。そして、その建物が現代の施設としても活用できるように再生することの2点。外装や内装は極力昔のものを残しながら、新たな建築を 見事に完成させました。現在は国立初の児童書の専門図書館として、一日に数百人もの人々が訪れています。

今回、チルドリン編集部は、この「国際子ども図書館」で定期的に行われている「館内見学ツアー」に参加してみました。職員の方に見所を解説していただきなが ら約1時間半かけて館内を見終えると、想像していたよりも遥かに多くの新しいことを学べる、発見の場であったことに気づかされました。たとえば、明治、昭 和、平成と、3つの時代にわたって増築された館内では、そのつなぎ目をはっきりと目で確認することができます。その100年にも及ぶ長い歴史をひとつにつ なぎ合わせた全体の設計の美しさに、誰もが感動を覚えることでしょう。また、公道に面したエントランス側の外壁は帝国図書館時代の姿がほぼそのまま保存さ れていますが、裏側の旧外壁は一面ガラスカーテンで覆われていて、建物の表と裏で新旧ふたつの異なる顔をうまく調和させ、見事な存在感を放っています。
さらに、最も印象的なのは、3階まで続く大階段。装飾が施された鉄製の手すりをカバーするように透明なガラスの柵が設置されていて(P.3写真参照)、古 きよきものをそのまま保存する姿勢がストレートに伝わってきます。中央に吊るされているシャンデリアは、創建時の照明器具として残っている唯一のものだと か。まっすぐ伸びた華奢な真鍮のネックと乳白色のガラスシェードが、クラシックな輝きで大階段を照らしていました。

このほかにも、一部壊れかけた旧外壁、手吹きガラスをはめこんだ窓枠、古い資料を参考に復元されたシャンデリアや創建時のときの木製建具など、館内のあ ちこちに歴史を感じさせる物語がちりばめられていて、まるで自分自身も昔にタイムスリップしたような感じがします。ツアーに参加する前の、なにも知らずに 眺めていたときの図書館の印象とは完全に異なる光景が、目の前に浮かび上がるのです。

「国際子ども図書館」では、このような館内を見学できるツアーが週に2回無料で開催されています。そのうち、木曜の回は「たてものコース(大人向けコース)」 に設定されていて、建物にまつわる話を聞きながら館内見学をすることもできます。子ども向け見学は団体単位の参加になりますが、お友達同士で仲間を募った グループであれば、申し込むことも可能です。(事前に電話での問い合わせが必要です)暖かくなってきたこの時期に、一度足を運んでみてはいかがでしょう か?「建物めぐり」をしながら、いまよりもっとたくさんのママやキッズが、アートや建築、デザインなどを気軽に楽しみ、暮らしをより豊かにしてもらえれば いいなと、私たちは考えています。

【国際子ども図書館情報】
■大人向けツアー
としょかんコース :毎週火曜日14時~
たてものコース :毎週木曜日14時~
※電話での事前予約のほかに、当日申し込みもあります。事前予約で定員20名を超える場合は、当日申し込みは受け付けない場合があります。この他、個別の見学も受け付けています。

■子ども向け見学
火曜日~木曜日
※ 館内見学、調べ学習、おはなし会、図書館・司書について(祝日および第3水曜はのぞく)など、子どもたちの要望に応じて、内容を組み合わせて見学を行っています。幼稚園・保育園・小学校・中学校・各種学校の団体を対象にした見学ですが、複数の人数が集まる15歳以下のグループ(最大30名)であれば、対応してくれます。要事前予約。

【access】
東京都台東区上野公園12-49
03-3827-2053
9:30~17:00
休館日:月曜日、毎月第三水曜日、祝日(こどもの日は除く)
www.kodomo.go.jp

[ チルドリン vol.09 2007年発行より ]