子どもが「かぜ」にかかったら?

[ チルドリン vol.02 2005年12月発行より ]


あまり薬に頼らず
たくさん水分を補給して
あわてずあせらず
ゆっくり休むのが一番です。

もちろん「かぜ」にかからないように予防接種を受けたり、普段からの手洗いやうがいを心がけていても、毎年バッドタイミングでかかってしまうのがやっぱり「かぜ」なのです。
恐いウイルス性のインフルエンザも巷では話題になっています。
小児科医の赤羽先生に伺いました。

小児科は、病院のなかでも非常に季節性があると言われています。夏は「アデノウイルス」「手足口病」、秋は「喘息」、そして冬は「インフルエンザ」「RSウイルス」などの病気です。そして、1年を通じて最も多いのが「ウイルス性上気道炎」、いわゆる「かぜ」です。そのなかでも、「髄膜炎」「腸重積」「川崎病」などの見逃してはいけない疾患も、まれにありますから、「かぜ」だからといって、放っておくのはとても危険なことなのです。

最近の子どもたちの身体が特に弱くなっているとか、「かぜ」にかかりやすくなっているとか、ということはあまり感じません。ただ共働きの家庭が多くなっているため、生後間もない乳児を保育園に預けたり、学童保育に通わせる家庭が増えています。保育園や学校は言ってみれば、ばい菌の住処。そこで感染症をもらう子が増えているのは確かです。そうした場所の菌は抗生剤耐性が強く、難治性であるという印象を持っています。食べ物の好き嫌いのある子どもは、多い気がします。それにともない鉄欠乏症の「貧血」になり、外来にて鉄剤投与しなければいけない場合もあります。就寝時間が遅くなっている傾向も見受けられます。これは両親の就寝時間が大きく影響していますよね。やはり、両親が夜遅く仕事から帰ってきてから遊んだり、お話したり、ご飯を食べたりするからでしょう。親子で上手にコミュニケーションをとる時間を持ちながら、睡眠もきちんととれるようにする。しかし、現実的にはとても難しいことだと思います。アレルギー持ちの子が増えているのも最近の特徴でしょうか。「食物アレルギー」はもちろん、「喘息」「アトピー性皮膚炎」など、いずれも長い付き合いになる疾患です。

子どもたちの「かぜ」を予防することは、とても難しいことだと思います。というのも、両親による「しつけ」による部分が大きいですから。むしろ、「かぜ」をひいてしまったあとの方が大切です。順調にいっても治るのに3日や4日はかかります。あわてずあせらず、ゆっくり休むのが一番だと思います。

「かぜ」の大部分がウイルス感染ですので、「抗生剤」は必要ないと思います。だから、「薬が飲めない!」と躍起になる必要はありません。熱があれば水枕などで頭を冷やし、水分をたくさんとることがとても大事です。子どもは必要水分量が大人に比べて多いんです。水分の摂取量が少ないと急速に脱水症状をおこしたり、状態が急変する可能性が高くなります。また、鼻水は鼻の中で固まってしまい、呼吸が苦しくなることもあります。薬局で売っている鼻吸い器など利用して、子どもの鼻の通りをよくするのはお勧めです。子どもは「たん」がうまく出せないので、病院で去痰剤などを処方してもらうのもよいでしょう。熱のために眠れないようなら、解熱剤を使用するのもよいと思います。

お母さんには、普段から子どもの状態をよく観察してほしいと思っています。子どもの病気には「髄膜炎」「心筋炎」といった命に関わってくる疾患がわずかながら存在します。その多くが、はじめはいわゆる「かぜ」の症状から始まるのです。「かぜ」症状から次第に意識状態が遠くなったり、けいれんをしたり、手足が冷たくなったりと、いつもと異なる症状がでてきます。私自身も、あともう少し病院に連れてくるのが早ければ・・・・・、と悔しい思いを抱いたことも少なくありません。お母さんが病院に連れてこなければ治療もできませんから、なるべくはやく子どもたちの「いつもと違う」サインに気づいてあげてください。

子どもには未来があります。その輝く未来を守ってあげるのは私たち大人の義務です。子どもの成長を見守っていくなかで、私たち大人も成長してければ・・・・・。そんなふうに私は感じています。

【profile】
赤羽桂子 (あかばね・けいこ)
2002年、富山医科薬科大学医学部卒業、医師免許取得。同年、東京医科歯科大学小児科入局、同付属病院小児科勤務。03年、東京都立墨東病院新生児科勤務後、土浦協同病院新生児科勤務。現在は同病院小児科に勤務。

[ チルドリン vol.02 2005年12月発行より ]